<毎日新聞・取材協力記事>補完代替療法に頼る危険性

2019年2月6日の毎日新聞朝刊に、

「がん大国白書 その日に備えて」という連載記事の一つである

 「補完代替医療のみは危険 科学的証明なし、食事療法など 生活の質、改善には効果も」

が掲載されました。

がん患者さんが食事療法などの補完代替療法に頼ることの危険性を解説した記事が載っています。私のコメントも記事中で紹介されています。

とても大事な内容ですので、ぜひ多くの方に読んでいただければと思います。

本文だけ少しこちらでご紹介させてもらいます。詳しくは新聞記事をお読みいただければと思います。

<本文抜粋>
医師に頼らず、健康食品でがんを治そうとする人は少なくない。食事による治療効果を強調するビジネスも存在するが、どこまで期待できるのか。その「実力」を振り返る。【高野聡】

「玄米食や野菜スープなどいろんな食事療法をやりましたが、どんどん体調が悪くなりました」。熊本県錦町で夫とともに自然栽培の「錦自然農園」を営む内布恵美子さん(54)は約1年前、標準治療の一つである抗がん剤の利用を拒否した日々をこう振り返る。

2016年秋、リンパ節転移のある進行性の大腸がんが判明、大学病院で抗がん剤治療を始めた。ところが直後から極度の冷えや手足のしびれ、味覚障害などの副作用が表れた。内布さんは「自分には合わない」と考え、使用から1週間で主治医に治療の終了を依頼した。

がんは1年もたたず肺や肝臓、おなかに転移した。野菜スープや玄米食といった食事療法だけでなく、健康食品やサプリメントなども試したが進行を止められず、体の痛みで食事も取れなくなり、18年3月までに体重は10キロ減少した。

考えを変えたきっかけは、動画サイトで知りあった宮崎善仁会病院(宮崎市)の押川勝太郎医師の助言だ。勧められた痛み止めを近所の病院で処方してもらったところ、すぐに楽になった。以後、押川さんの下で抗がん剤治療を再開、食事も取れるようになり体重も回復した。

押川さんは「副作用に対抗できる体力をつけるには、体重を増やす必要がある。玄米食はやせてしまい逆効果だ」と説明する。内布さんは農園のブログで食事療法への過信を戒める情報発信を続けている。

科学的効果が証明されていない食事療法などを「補完代替医療」と呼ぶ。米国立がん研究所は「通常医療と見なされていない、さまざまな医学・ヘルスケアシステムや施術など」と定義。種類もサプリメントや運動、しんきゅう、マッサージ、ヨガ、音楽療法などと幅広い。日本でも標準治療と組み合わせた「統合医療」が関心を集めている。

東京都立駒込病院の鈴木梢医師らが15年に、患者遺族を対象にアンケートすると、53%の患者が補完代替医療を受けていた。目的は「精神的な希望」「免疫力向上」「病気の進行抑制」などが上位。「病気の治癒」を挙げた人が約半数もいた。

だが、いずれの補完代替医療もがんの縮小効果はない。補完代替医療に詳しい大野智・島根大教授は「確認されているのは、はり治療で口が渇く副作用を改善したり、ヨガや運動でリラックスしたりと、身体症状の緩和や生活の質(QOL)の改善につながるものばかり。補助的な利用が望ましい」と話す。厚生労働省研究班の「がんの補完代替医療ガイドブック第3版」は「補完代替医療のみは危険」と警告している。

補完代替医療に頼り過ぎると弊害もある。乳がんや大腸がんの患者らを米チームが調べたところ、補完代替医療だけに頼る患者は、死亡リスクが標準治療だけの患者より高かった。補完代替医療を併用した標準治療の患者でも高かった。補完代替医療を頼り、標準治療がおろそかになるためとみられる。米エモリー大ウィンシップがん研究所の大須賀覚医師は「補完代替医療を過信し、標準治療を適切に受けないのは危険だ」と指摘する。

予防に有効でも治療できない

国内には糖質制限や玄米食など、食事によるがんの治療効果をうたう書籍が多い。大須賀さんは「日本は『食が健康をつくる』という文化があり、食事を通じて病気を治そうという意識が強い」と分析する。

だが現実にはがんの再発率や生存率の改善が科学的に確認された食事療法や健康食品はない。食事の効果を強調する書籍の多くは再現性の低い、個人の経験に基づいている。

大須賀さんは「がん予防に有効な食品でも治療はできない。長期間にわたり健康維持を求める予防と、短期間でがん細胞の駆逐効果を狙う治療は違う」と強調する。

鈴木さんらの調査によると、補完代替医療にかけた費用は10万円未満が6割。一方、300万円以上も5%いた。利用した患者の約半数は主治医らに相談しておらず、適切な助言が受けられた患者も少なかったという。

鈴木さんは「補完代替医療は幅が広く、どれが適切か把握するのは難しい。患者はウソの情報もあることを認識し、正しい情報か見極められるよう心がけてほしい」と話す。

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