「アメリカで抗がん剤は使われていない」という嘘について

「アメリカでは抗がん剤はもう使われていない、FDA(アメリカ食品医薬品局: 薬の承認をするところ)は抗がん剤を禁止している」という嘘も、ネットで良く見られます。こちらもWHOが抗がん剤を禁止していると同じタイプの嘘です。一般の人の多くが、英語で専門的な情報を調べられないという隙をついたもので、また日本人はアメリカでやることを信じる傾向があるので、アメリカを出すことで信じさせようとする嘘です。

これは全くの嘘です。アメリカで抗がん剤治療は禁止されているどころか、今でもたくさん行われており、多くの患者さんが抗がん剤治療を行い、がんと闘っています。医療者側としてはバカバカし過ぎる嘘なのですが、一般の方が簡単には見抜けませんので、この機会に明確に否定しておこうと思います。

FDAは抗がん剤を禁止していません

FDAは抗がん剤を禁止するどころか、がん治療に使ってもらうためにたくさんの抗がん剤を承認し続けています。現時点で60を超える抗がん剤を承認しており、それらの多くは病院で実際に広く使われています。FDAが承認している抗がん剤のリストをレビュー論文から引用して以下にお示しします。

こんなにたくさんの薬剤が承認されています。このリストには薬剤の名前、承認された年数、適応となるがんの情報が詳しく示されています。見ていただけるとわかるように、古くは1949年から、新しいものだと2013年までたくさんの抗がん剤を承認し続けています。禁止どころか承認することで使用を推奨しています。

もし、FDAの本体のサイトでも確認したいという方は、このリンク先のFDAのサイトで、さきほどのリストにある抗がん剤の名前を入力してもらえば、承認されている事実が確認できます。

患者は抗がん剤を使用してがんと闘っている

アメリカではたくさんの患者が実際に抗がん剤を使用してがんと闘っています。それは子供から高齢者まで全ての年代の人です。私が所属しているがんセンターでも、たくさんのがん患者が抗がん剤治療を受けに通っています。ご存知のように、抗がん剤は頭髪が抜けてしまう副作用があります。髪の毛が抜けてしまった姿というのは、がん患者や家族には辛い姿ではあります。しかし、同時にその姿はがんと戦う勇気を与える姿として、アメリカでは良く新聞や映画などで紹介されたりします。今回は、アメリカの患者が実際に抗がん剤治療を受けて闘っている証拠として、その姿のいくつかをご紹介したいと思います。写真をスクロールしてご覧いただけるかと思います。リンク先を見ていただくと、それぞれの治療のストーリーも紹介されています。

こんなにもたくさんの小さな子供達も、抗がん剤の副作用と戦いながら、がんと必死で闘っています。こんな馬鹿げた嘘は、命をかけて戦っているこれらの患者さんに大変に失礼です。

嘘をいう人達には注意をしてください

ツイッターでもブログでも、本当にたくさんの抗がん剤に関する嘘を見ます。「アメリカでは抗がん剤がやられていないのに、お金儲けのために日本だけで行われている。」「アメリカの抗がん剤の在庫を消費するために日本で使っている」など。これらの内容を無責任に書いている人には要注意です。その人が語る治療の話も真実に沿っていないことは明白です。本当に嘘を伝える人たちにお気をつけください。

抗がん剤は必要な治療

もちろん、抗がん剤には辛い副作用もあります。理想的な治療ではないのは確かです。しかし、がんという難しい病気を治すためには、まだまだ使わないといけない方法です。なぜ、副作用がある抗がん剤を使わないといけないかについては、過去のブログをご参考になさってください。

まとめ

「アメリカでは抗がん剤はもう使われていない、FDAは抗がん剤を禁止している」というのは全くの嘘です。FDAは多数の抗がん剤を承認して、使用することを推奨しています。また、たくさんのがん患者がアメリカでは実際に抗がん剤を投与されて、日々がんと闘っています。嘘に騙されないように注意をしてください。