高額な治療ほど効果があるという誤解

がん治療についての大きな誤解の一つが、「料金が高い治療ほど効果がある」というものがあります。日本においては、これは明らかに間違いで、「安価な治療ほど良い」と言えます。

標準治療と自費診療

がん治療には大きく分けて二つの種類があります。一つは、標準治療と言われる病院で行われている治療です。これらは健康保険の適応になりますので、一般的に安価な治療です

もう一種類の治療は、自費診療といわれるもので、小さなクリニックなどを中心に行われているもので、健康保険が適応されません。これらの治療は保険がきかないために、一般的に高額の料金を請求されます。

高額な料金がかかる自費診療は、価格が高いので、良く効きそうに思う方も多いと思います。それに対して標準治療は料金が安いので、それほど効果ないと思われるかもしれません。これは全くの勘違いで、標準治療は世界で最も効果が確認されてる治療で、自由診療とは効くことが証明されていない不確かな治療です

この話をするとおかしいと思われる人も多いと思います。世の一般的な商品では、良いものほど高いです。効果があるのに安いなんておかしいと思われるかと思います。実は保険適応になっている治療も本当はとても高額です

標準治療が安いメカニズム

標準治療を行った場合の料金について説明します。例えば、がんになり外科手術を受けると100万円を超す費用がかかります。最近話題の薬剤のオプシーボを使えば月に100万円を超す治療費がかかります。しかし、患者は自費負担分の10-20万円/月程度を払えば良い形になっており、見た目の料金は10-20万円ということになります。実は、残りの多額の料金は税金で払われています。正確には税金で払っているので、大きな見方では自分たちで払っているのですが、実質的に目の前で支払うお金が抑えられています。

病院で治療を受けると10万円、巷の流行っているOO療法は100万円、だから100万の方が効くのではというのは全く間違いです。本当は病院の治療はもっと料金が高いけど、自費分が少ないだけです。国が費用を補ってでもやってもらう価値があるので、お金をはらってくれているのです。

標準治療は選ばれしエリート治療

標準治療は国に費用負担の補助をしてもらえるので、多くの患者が受けることが可能です。そのため、製薬会社は自社の薬を保険適応にしてもらいたいわけです。ただ、国は大変に厳しい審査システムを持っていて、薬が確実に効果があり、副作用がないことを数百人の患者で証明しないと、保険適応の認可をあげません。現在では、新薬候補として開発されたもので、保険認可までいくものは、2−3万個に1個といわれるほど厳しいものです。これほどの狭き門をくぐり抜けた標準治療はまさにエリート治療と言えます。政府はこのエリート治療にしか税金を払ってはくれません。

今まで払った税金を取り戻してください

皆さんは、今までたくさんの税金を払ってきていると思います。それで補われている標準治療を受けるということは、今まで払った税金を取り戻していることになります。ぜひ、お金を取り戻してください。最もおかしな話は、これまで高い税金を払ってきて、やっとその恩恵として治療費を免除されるのに、それを受けずに高額の効果のはっきりしない無保険治療を受けることは、とても馬鹿げています。

海外では標準治療が高額

海外では、保険システムがしっかりしておらず、標準治療を受けるためには、とんでもない高額の支払いが必要なことが多いです。そのため、標準治療を受けられない人が本当にたくさんいます。がんになっても、子供達にお金を残すために治療を受けないという選択をする人もいるほどです。日本では素晴らしい恩恵を受けていることを、もう一度考えてもらって、ちゃんと費用が抑えられた確実な治療を受けるようにしてもらえればと思います。

まとめ

「料金が高い治療ほど効果がある」というのは間違いです。日本では、国の補助を受けられるために、「安い治療ほど効果がある」と言えます。効果が不確かな自由診療にあえてたくさんのお金をかける必要はありません。本当は高額の治療を安く受けられていることを良く理解してもらって、安心して標準治療を受けてください。

 

※「安い治療ほど良い治療」というのは、がん治療に関しての場合です。皮膚科や形成外科などの領域ですと、効果がはっきりと証明されている治療でも、病気ではなく美容目的であるために保険適応とならないものもあります。全ての病気に当てはまるとは思わないでください。