あなたが知っておくべき がん治療の現状

どのタイプの癌が多いのか?

次に日本人はどのタイプの癌で亡くなる人が多いのかを見てみましょう。

以下は日本男性の部位別の粗死亡率を年次推移で示したものです。人口10万人のうちの何人がどのタイプのがんで亡くなっているのかを表しています。

これを見ていただくと、男性では肺がん、胃がん、大腸がん、肝がんの順で多いことがわかります。

次は女性の部位別の癌死亡率データです。

女性では大腸がん、肺がん、膵臓がん、胃がんの順で亡くなる人が多いことがわかります。

男女のデータを見てもらうと気づかれるかと思いますが、多くのがんで死亡率は上がっています。これは亡くなる人が増えているということですが、これは何の影響でしょうか?

ネットではこのデータを持ち出して、日本ではがんで亡くなる人はどんどん増えているから、標準治療を受けてはいけないとか言っていることもあります。しかし、その解釈も明らかに間違っています。

なぜかというと、この10万人の中の内訳が変わっているからです。日本では急激な高齢化が進んでいます。そのため、この国民10万人中の高齢者の割合も、最近になるについて急激に上がっています。そのため、そもそも10万人中のがんになる人の数が劇的に多くなっていますので、そのなかでがんで亡くなる人の数が当然増えることになります。

過去と現在との10万人中の年齢の不一致を補正しないと、がんになった後に助かるようになったか、治療がうまくいっているかがわかりません。

日本のがん死亡率は劇的に低下

あえて最初に粗死亡率(年齢の調節をしていないデータ)を出しましたが、次の図が本当の意味での死亡率の年次推移を表しています。これは年齢調整という処理をして、10万人に含まれる年齢を各年で均一にするように調整しています。

その男性の結果がこちらです。

ほぼ全てのがん種で10万人のうちで、がんで死亡する患者割合が減っていることがわかります。

次に女性のデータです。

こちらもほぼ同じです。胃がんをはじめとして多くのがんの死亡率が時代変遷とともに低下していることがわかります。この男女ともに年齢調整死亡率が下がっていることは、がん予防・検診・治療が進化していることを意味しています。

日本では高齢者が劇的に増えているので、がんになってしまう人は増えていて、粗死亡率は増加しています。しかし、同じ年齢層に補正して比べると、がん死亡率は飛躍的に低下しています。同じ年齢の人を過去現在で比較すると、がんになってしまい、治療をしても最終的に亡くなってしまう人の数は劇的に減っているということになります。

しかし、これが十分かというと、もちろんまだまだ十分とはいえません。がんで苦しんでいる患者はいっぱいいますし、救えていない患者がいっぱいいます。今後もさらなる進歩が求められます。