あなたが知っておくべき がん治療の現状
国立がんセンターは定期的にがんに関した統計データを公表しています。この資料は大変に貴重なもので、このデータを見ると、日本のがん治療の現状を読み解くことができます。
今回は最新データの中から、皆さんに特に知っておいてもらいたい大事なデータをピックアップして、それに私の説明を加えて、がん治療の現状を解説したいと思います。
ネットにはがん治療に関する様々な情報が広がっていますが、曲解や嘘も多く、実際の現状を誤解されている方も多いです。怪しい情報に踊らされて、間違った判断をしないためにも、日本のがん治療の現実を正しく知ってもらえればと思います。
がん患者数・死亡数は増加している
がんでどのくらいの人が実際に亡くなられていて、どのぐらいの人が新たにがんと診断されているかをまずお示しします。
- 2017年にがんで死亡した人は373,334人(男性220,398人、女性152,936人)。
- 2016年に新たに診断されたがん(全国がん登録)は995,132例(男性566,575例、女性428,499例)
- 生涯でがんで死亡する確率は、男性25%(4人に1人)、女性15%(7人に1人)。
となっていて、日本国民のかなりの人ががんに罹患してなくなっていることがわかります。このがん死亡者数は年々増加しています。
では、なぜ増加しているのでしょうか?
増加しているということを知っている人は多いです。しかし、その理由を正確に理解していない人も多くいます。人工添加物を食べるからだとか、携帯電話の電磁波の影響だとか、果ては病院の治療が悪いから、どんどん亡くなる人が増えているとか、様々な謎な解釈がネットなどには書かれていたりします。それは本当でしょうか?
もちろん、そんな事実はありません。そのようなことが影響してがん患者さんが増えているという証拠はありませんし、病院治療がうまくいかないから亡くなっている人が増えているなどという事実もありません。なぜならば治療によって助かる人の割合は確実に上がっているからです。これについてはあとで詳しいデータを示して説明します。
この死亡数増加の最大原因は高齢化です。
以下のデータを見てください。
こちらは各年齢層での死亡数を表したグラフです。こちらからわかることは、男女とも日本のがん死亡者数を上げているのは80歳以上の高齢者の存在です。がんは高齢になると発症する確率が劇的に上がります。急激な高齢化の進展によって、超高齢者の人口が増加して、がん患者数と死亡数を急激に押し上げることになりました。
このグラフからもう一つ読み取れるのは、80歳以下の世代でがんで亡くなる人の数は減っていることです。これは予防・検診などの発展で、がんになる人の数が減ったことと、治療が進歩したことで亡くなる人の数が減っているためです。
高齢になるとがん発生率は上がる
高齢者になるとがん罹患率が上がるという話をしましたので、それがどのぐらい変わるのかをデータでお示ししておきます。
このデータは各世代でのがん罹患率を示したグラフです。60歳を過ぎると急激に上がっていき、数千倍にもなることがわかるかと思います。女性の方が緩やかなカーブになっているものの、やはり高齢者になるとがんになる確率は飛躍的に上がってしまいます。
がんは正常細胞に遺伝子異常が積み重なり起こります。高齢になってくると遺伝子変異が蓄積してがんを起こす可能性が上がります。また、異常が起こった細胞を取り除く能力が低下することなどが影響して、発がんする可能性は飛躍的に上がってしまいます。