がんの標準治療を受けない危険性
本当に、本当に、皆さんに知って欲しいことがあって、今回は強い思いを持って、この記事を書きます。是非読んでいただければと思います。
ネットや書籍には、がん治療に関した大量の情報があふれています。本当に大量です。そしてその情報の中には、病院で行われている標準治療(科学的証拠に基づく最善の治療)を否定して、根拠の明確でない治療を勧めるものが多くあります。
「手術は受けるべきではない」「抗がん剤は患者を殺す」などといって、その代わりに代替療法(効果が証明されていない治療)を勧めます。癌に効くという食品や、食事方法やら、体温を上げるやら、癌の専門家からみれば呆れるものばかりです。
これはとてつもなく怖いことで、ネットに広がる情報を信じて、標準治療を放棄してしまい、代替療法を中心に治療を進めてしまい、急激にがんが進行してしまうケースが実際に多く見られています。情報は人の命を簡単に奪います。
今回は、実際に標準治療を選択せずに、代替療法を選択してしまった場合に、どのぐらいのデメリットが生じてしまうのか、実際の患者さんのデータをもとに検証した2つの研究論文を紹介して、その危険性を解説したいと思います。
代替療法のみを選ぶ危険性
最初に紹介するのはJNCIという権威ある雑誌に載った論文です。この論文では、アメリカで標準治療を行わずに代替療法のみを行った患者281例の検討を行っています。患者は転移を伴わない状態で発見された患者で、乳がん・前立腺がん・肺がん・大腸がんのいづれかと診断された人です。まず、全患者の治療後の経過を、通常の標準治療を行った患者と比較したのが下の図です。
このグラフの見方ですが、縦軸が生存されている患者さんの割合を示しています。それに対して横軸は月数です。最初の0ヶ月の診断時点では100%の患者さんが生存されています。月が経つにつれて徐々に線が下に落ちているのは、この時点で亡くなられた人がいることを意味しています。
二つの治療を受けた場合の差は歴然としています。標準治療を受けた場合には6年(72ヶ月)経った時点で、約75%の患者さんが生存されています。それに対して、代替療法のみを選んだ患者さんは50%の方しか生存していません。
さらにがん種別のデータもお示しします。
左が肺がん患者で、右が大腸がんの患者のデータです。大腸がんではその差はさらに大きなものとなっていて、6年の時点で標準治療群では80%と、ほとんどの人が生存されているのに対して、代替療法のみを選んだ患者さんは約35%の方しか生存されておらず、多くの方が6年の間に亡くなられてしまったことがわかります。
この論文は、がん患者が標準治療を行わない選択をすると、長期生存率が明らかに低くなってしまう事実を明らかにしています。