がんの標準治療を受けない危険性

未承認治療に過度の期待をしてはいけません

未承認治療を絶対に行ってはいけないとはいいません。がんはとても難しい病気です。残念ながら標準治療を行っても、全員が助かるわけではありません。そのため、他の未承認治療も含めて、できる限りのことをしたいという気持ちはもちろんわかります。

ただ、未承認治療の中に有効なものが隠れている確率は極めて低く(約0.1%以下)(詳しくは以前のブログ記事「未承認治療の何%が本当に効果を期待できるのか?をご覧ください)、それらを過度に期待してはいけません。

保険診療している医師に相談してください

標準治療を行っている医師にまずは相談をしてください。そして、ご本人の治療に対しての疑問・不安・希望を伝えてください。医師はそれを踏まえて、一緒に治療を考えてくれると思います。

標準治療と一言にいっても、大変に多くのバリエーションがあります。どんな高齢者でも、どんな持病を持っている人でも、全員に同じ治療をしているわけではありません。

医師はその人に合わせた最善の治療を考えて行ってくれます。ネットに広がる情報に頼るのではなくて、専門の保険診療をしている医師に相談をしてください。

情報シェアは人の命を奪う

がんは難しい病気です。標準治療を行ったとしても、全員が助かるわけではありません。標準治療を行っても亡くなる人は残念ながらたくさんいます。誰かが亡くなったから良い治療ではないと、乱暴な話をする人が多いですが、全員が助かる、全員が助からないのような白黒のはっきりした簡単な世界の話ではなく、がん治療は確率的な話で考えないといけません。

とても難しい話になることが多いので、一般の方には理解しにくいことも多いと思います。それはしょうがないことです。ただ、ネットの情報を見た際に気をつけてもらいたいのは、標準治療を受けることを否定するようなものには大いに警戒してください。安易にそれらの情報をシェアして、拡散したりしないようにしてもらいたいです。そのクリック一つで行われる拡散の積み重ねが、多くのがん患者さんを実際に苦しめて、命を奪うことすらあります。

最後にお伝えしたいこと

ネット・書籍で広がるがん治療情報には注意をしてください。特に、標準治療を否定して代替療法を進めるものには警戒してください。この二つの論文が示したように、標準治療を適切に行わないことは大変な危険を伴います。根拠のある標準治療を第一に考えてください。保険診療をしている医師に相談するようにしてください。

もう一つお願いしたいのは、ネットに広がる信憑性のはっきりしない、がん治療情報を安易に拡散しないでください。本当に正しいのか、もう一度考えてもらいたいです。あなたが安易な気持ちでシェアした情報は、本当に貴重な人の命を奪う可能性があります。多くの人がこの問題をもっと知ってもらって、がん患者さんが安心して治療を行えるようになってもらいたいと願っています。