第2回 やさしいがん講座 標準治療以外を選択する危険性

標準治療を選ばない危険性

標準治療はとても低い確率を勝ち抜いたエリート治療です。

そのすごい治療を選ばずに、他の未承認治療を使うことは当然リスクを伴います。それらに本当に効果のある治療がゴロゴロあれば良いのですが、残念ながらほとんど含まれないため、それらに頼ることにはリスクが伴います。

実際のデータを見て、その危険性を知ってもらいたいと思います。

この研究(元論文はこちら)では標準治療を行った患者さんと、標準治療を行わずに代替療法のみを行った患者さんの治療成績を比較しています。

その差は歴然としていて、6年経過時で25%近くの生存率の違いとなっています。

この違いは標準治療の効果が高い大腸がんの患者さんではさらに開きます。

6年経過時で標準治療群は80%生存するのに対して、代替療法群は35%しか生存していません。代替療法を選ぶことは大変に危険であることを認識していただきたいと思います。

未承認治療に過度の期待をしてはいけない

では、今回のまとめです。

がんは大変に難しい病気です。その辺にゴロゴロと効果ある治療は転がってはいません。効果があるように見えるものも、専門家の正確な評価を受けると、効果はほとんどありません。未承認治療に過度の期待を持つのは危険です。

まずは効果が確認されている標準治療を必ずご検討ください。それを選択しないことは大変なリスクを伴います。

もちろん、標準治療が全ての患者さんを治せない現状で、他に試せないものがないかとチャレンジしたい患者さんの気持ちは痛いほどわかります。そのような方にチャンスがないということを伝えて、ガッカリさせたいのでは決してありません。

未承認治療のなかに効果のある治療がある可能性は極めて低いからこそ、闇雲に自分で探したり、素人のおすすめを聞くのではなくて、ちゃんとしたがん専門医に相談して欲しいのです。

がん専門医は現在の治療の限界を知っています。それとともに現在試されている未承認治療に関しても知っています。もしかすると期待できるかもという未承認治療を紹介してくれることもあります。だからこそ、ちゃんとした標準治療を行っている専門医に相談して欲しいと思います。

次回の第3回では、有効性が高い未承認治療を選ぶためにはどうするのか、がんの専門家は何を根拠にして、未承認治療の中で期待できるものを探しているのかについて、国内未承認薬、臨床治験薬などの話をします。